アラフォーからの転職・移住・結婚・デザイン…あてどもなく彷徨う中年放浪記

2016年2月29日月曜日

神戸お気に入りのお店:えぇとこどり くらわんか

限定品、内臓の稀少部位がたまらなく旨い。

酒飲みなら大概の人は好きであろう、焼き鳥。
自分も時々、無性に食べたくなる。
タレがかかったパリッと香ばしい串も、塩でしっとりと焼かれた串も
どちらも酒に合って、その時のお腹の具合で量をコントロールできるのも
酒飲みにはありがたい。

東京に居た時は、入谷の昭和通り沿いで幼なじみがやっている
鳥昭(とりしょう)」という、素晴らしく美味しいお店に行っていた。
コースのみだけど、どの串も美味しい。
結構ボリュームがあって、女性にはちょっとキツいぐらいかも。
一時は頑張ってワインと日本酒を多品種揃えていたけど、
さすがに大変とのことで、現在は絞った品種のみ扱っている。



神戸に移住してからは、あまり焼き鳥のお店は開拓していない。
その中で偶然出会った美味しいお店はふたつ、
ひとつは水道筋商店街の「水道筋チンタ 本店」、でも全然通えてない。
もうひとつは、会社からほど近い花隈の「えぇとこどり くらわんか」。

こちらは細い南北の筋を挟んで、新しいお店と古いお店の2店舗が向かい合っている。
店の間口はどちらも狭くてほぼ同じぐらい。
最初はシェアオフィスのデザイナーNさんの紹介で一緒に行ったのだけど、
美味しいのでひとりでも通うようになった。

ひとりで飲みに行くとなると、古い方のお店に行く。
新しいお店は内装がこざっぱり、お皿がデザイナーズ的な変わった皿で
全体的にちょっとお洒落な感じなので、
オッサンひとりで行くのが何かはばかられて、誰かと行くときに決めている。

古いお店に入ると、薄暗く細長い店内はカウンターだけで、
座ると後ろがすぐ壁で狭いのが落ち着く。
キリンの瓶ビールを1本頼んで、
ささみのサラダや煮物といった突き出しでぼちぼちと始めると、
つぶらな瞳の愛嬌のある店長が
せっせと目の前で串を焼いて、直接お皿に置いてくれる。

こちらは通常の串と、限定品の稀少部位の串があるけど、
稀少部位の串もそんなに高くなくて、絶対にお得。
自分はいつも稀少部位からスタートして、
あらかた稀少部位を制覇してまだお腹に余裕がある時は通常の串に移る。
稀少部位は、どれも脂の乗りが良いので、
2回同じ串を食べると飽きるかクドいと感じるかも知れない。

通常の串もこの美味しさに対して、お値段は決して高くない。
特に塩だんごやせせり、みさきといったあたりは素晴らしい。

日本酒は、毎回変わるオススメの品種を1本だけ用意していて、
これがどれもきちんと美味しいお酒なので、安心して頼むことができる。

ここに来ると、串を食べる間に瓶ビール1本、お酒を1杯飲んで席を立つ感じ。
ひとりで飲むときはあんまり長っ尻もよくないし、
そもそも閉店間際の時間に駆け込むことも多いから。

店員さんは皆明るくてきぱきしていて、適当に相手をしてくれて雰囲気が良い。
自分のような中年ひとり酒にぴったりのお店。
もちろん、若い女性グループやカップル、夜の商売の女性とお客さんなど
ファン層は幅広いので、よほど改まった会などでなければ大丈夫。

神戸にも、ひとりでボーッと焼き鳥を食べながら
のんびり飲むことのできるお店があって良かった。

こんなアテとビールでスタート。

稀に野菜串を頼むことも。野菜も美味しい。

わさびなどの仕事も丁寧。

2016年2月27日土曜日

師匠の講演会

タイトルはお堅いけど、内容は割とカジュアルでトリビア的な脱線も多い。

今日は“六甲山の師匠”と勝手に慕っているとあるオジさまが講演会をするというので、
ハーバーランドにある神戸海洋博物館までテクテクと歩いて行った。

会場に着くと、満席で200人ぐらいのところに半分以上は埋まっている感じ。
なかなかの盛況。大半はシニアの皆さま。
そしていつも仕事でお世話になっている皆さんもちらほらと見えた。

講演会の内容は六甲山と摩耶山の観光開発の歴史について、
1時間強、ひとりでお話されるという内容。
前から個人的にも会社の勉強会でも何度も聞いている内容だったけれど、
やはり改めて発見することや忘れていたことも多く、大変勉強になった。
さすがの知識量に改めてうなる。

六甲山という市街地から30分で行くことができる神戸の自然財産を、
もっと多くの方に知ってもらい活用してもらいたいと
師匠は締めくくっていた。
他の都市ではこんなに大自然と市街地が近いところは稀だから、
もっと気軽に山に足を運んでもらう仕掛けができないものか。

会が終わってから、何人かの方と立ち話をしているうちに、
師匠の歴史知識とハイキングをコンテンツ化して、
イベントにしちゃいましょう!というありがたい申し出が。
実施に向けて動き出したら、全く新しい層の掘り起こしにつながりそう。
これは、やるしかない!

2016年2月26日金曜日

長年お疲れさまでした

最後にユニークなご挨拶をする主賓。

昨日は六甲山大学が主催する「ミントサロン」に参加して、
摩耶山天上寺の伊藤浄眞副貫主のお話を聞いてきた。
ご自身が暮らす地元・摩耶山への愛があふれるお話で、
冗談あり歴史の勉強ありと楽しい講演だった。

講演が終わり簡単な懇親会のあと、
そこの参加者有志でとある方の送別会を行った。
神戸の山に関わる仕事に携わる中で、何度となくお世話になった方。

今度は全然別の畑で、ベンチャー企業を立ち上げるとのこと。
定年より1年若い転身だけど、
そのバイタリティには本当に驚かされる。

最初にお会いした時は随分と難しそうな方だな…と思ったし、
その後も何度も厳しいお言葉も頂戴したけれど、
3年近く経ってようやく波長が合ってきた。

本当はとても面倒見がよく、アイデアと実行力にあふれた頼れるオジさま。
このあいだは、楽しい大人の飲み会にも誘っていただき、
たらふく食べ飲みさせていただいたりもした。

仕事のお相手とは、なかなかすぐにはノリが出にくいけど、
じっくり腰を据えてお付き合いをしていくと
あるときにふっと距離が縮まって、急にグルーヴ感が出てくることがある。

よくよく考えると、送別会に出席していた皆さんとは、
ほとんどそんな感じで徐々に距離を縮めてきた方ばかりだった。
これからも信頼を得て、ご協力いただけるよう
ますますちゃんと仕事していかないとな、と思った夜だった。



今回の主役には、カバランのシェリーカスクのミニボトルをプレゼントした。
大きい瓶はさすがに高いので断念。

ウイスキーの原酒は、通常10年前後かけて熟成させるところを
ほんの数年で同等に熟成させてしまう驚くべき技術力。
最も新しいウイスキー蔵のひとつにもかかわらず、
世界的に品質を認められて引っ張りだこ、値段も評価もぐんぐんと上昇。
分かりやすくパンチがある美味しさで愛嬌のある味。
彼の新しい会社がそんな存在になりますように、という気持ちを込めて。

送別会はJR三ノ宮駅至近のお店で。超特大カツが名物。

2016年2月18日木曜日

大分-小倉-熊本、美味しい九州うどん体験

自宅で作って食べたごまだしうどん。
作ったというほどのことは何もしていないけど、それでもとても美味しかった。

このあいだ、大分の彼女の実家に結婚のご挨拶に伺った際、
知り合いにはあれこれ大分みやげを買ってきたのだけど、
自分用に買ってきたおみやげは「ごまだし」。
以前にマンガ「美味しんぼ」で見て美味しそうだなー…、と思ったまま
実際に食べたことはなかった。
ちょうど良いと思い、別府から帰ってくるサービスエリアでひと瓶購入。

そういえばセブン-イレブンの冷凍麺が美味しいって話を
あちこちで聞いたことがあったな、と思い、
帰宅途中のお店で冷凍のさぬきうどん2食入を購入。

これがなかなかの優れもので、3分30秒、
内袋に入れたままレンジで温めるとちゃんとしたうどんになる。
うどんにごまだしをたっぷりと乗せて、
やっぱりセブン-イレブンで買ったネギも添えて、
湧かしたお湯をかけたら出来上がり。簡単…

全然クッキングというには手が掛かっていないにも関わらず、
やや甘めで香ばしく、魚の旨味が感じられ、一気に食べてしまった。
しみじみとした美味しさ。これは素晴らしい。
自分が買ってきたごまだしはアジで作られていた。



九州はさすが鶏の国。
大分に行く途中の小倉駅で、在来線ホームにあるお店で「かしわうどん」も食べた。
麺がふわっと柔らかいのでさぬきうどんとは違うけど、
鶏肉のそぼろがたっぷり入って、これも美味しかった。
撮り鉄のアニキたちが10人ぐらいで、メガネを曇らせてキャッキャと食べていた。

なぜかフレームのそこかしこから漂う昭和の匂い。
鉄分高めのアニキたちがわっせわっせと掻き込む。

かしわがたっぷりと乗ったうどん。
丸天は追加。鶏ご飯のおにぎりも食べた。



東京にいた時は、うどんは熊本の友人が作っている「肥後そう川 熟成手延べ麺」の、
半生の麺を取り合わせて毎月送ってくれるサービスで買っていたのだけど、
神戸に来てから自炊することが激減したので、今は買っていない。
特に、ここの半生のうどんとそうめんはかなり美味しいと思う。

実は、ふた夏ぐらい置きっ放しでセルフ熟成させた(してしまった)
肥後そう川の麺が大量に自宅に残っていて、
最近おそるおそる食べてみたら、日本酒の熟成酒と同じように
醤油っぽい、紹興酒っぽい香りがするようになっているものの、
熟成香ということで気にせず最近せっせと茹でては食べている。

セルフ超熟うどんは、ツルツルとしたのどごしは変わらずにコシが更に増して、
美味しさがアップしている気がするのだが…
自己責任系グルメのため、万人にはオススメできない。

2016年2月17日水曜日

消えそうで消えないのが物欲

年明けにゲットしたこいつは今のところ最高。
Peak Performance/Heli Backpack 22L
バックカントリー用の22リッターで、フレームが回っているので
容量を気にせず荷物をバンバン突っ込めて、日常使いにちょうど良い。

歳を取って、物欲が減ってきた。
特に服や身につけるもの、食器、雑貨など、
一時期のことを思うと全く欲しいと思わなくなった。
コレクター心をくすぐる限定CDなんかもこれにあたるか?
「なかなか良いな」と思っても「絶対に欲しい!」まで思うことは稀。

欲しいものをひと通り買ってきて、
満足したり失敗したりをひと通り経験したので、
もう通常の消費活動・消費体験は必要なくなったんじゃないかな。

最近は自分を格好良く見せてくれるものではなくて、
使ったり所有することで新しい体験・豊かな体験ができる、
もしくはできそうだとワクワクさせてくれるものにしか心が動かない。
物欲が減ったなーとか言いながら、いま欲しいものがみっつある。


ひとつめ:
if you have/TiMNEY
3WAYで使えるストーブ、しかも超軽量。
バラして小さくなるところ、組み立てのギミック、
木の枝を薪として使えるところなど。全てが魅力的だ…
これを持って市ヶ原か掬星台あたりで火を熾して湯を沸かして、
温かい飲み物を飲んだり何か炙って食べたりしてみたい。
これを囲んでのんびりとした時間を過ごすイメージが
ハッキリと湧いてくる、稀有なプロダクト。


ふたつめ:
deejo/COLLECTION WOOD & COLLECTIONBLACK : ROSEWOOD
こちらも超軽量、しかも素晴らしくエレガントなデザインのナイフ。
ナイフはほとんど使用するシーンはないし、
買ったばかりのオレンジのハンドルのオピネルもあるんだけど…
これは気になる!すごく欲しい!
アウトドアに連れていって使ってみたい。
機能と見た目が融合しているのが素晴らしい。
国内でBLACKは買えるのだろうか?


みっつめ:
雨の日靴。GORE-TEX®なんかの防水で、
スニーカーかアウトドア用シューズが欲しいなと。
スピードシューレースが使いやすそうなSALEWA
ハイカットはイマイチだけど履きやすそうなTHE NORTH FACE
軽そうな雰囲気が良さげなHAGLÖFS
機能とルックスは最高、ついでにお値段も最高なARC'TERYX
こんなあたりを山でも、雨や雪の日の街でも、ガシガシ履きたい。



頻繁に山に行くから、欲しい物がアウトドア系に偏ってきた…
こんな人もいるけど、当分そんな風にはなれないだろうな。

2016年2月16日火曜日

初大分、初対面(彼女の両親と)

駅から直結しているホテルからの眺め。遠くに別府温泉を望む。
神戸のように海と山が近く、山は標高が高く六甲山より急峻。

この週末は“おんせん県”大分県に行ってきた。
目的はただひとつ、彼女のご両親に会って、
彼女と結婚することを了承していただくこと。

記憶が確かならば、九州は過去に1度しか行ったことがなく、
それも友人の結婚式に出席して翌日に帰る弾丸ツアーのみだったので、
ほとんど印象にないと言っていい。



土曜日に新神戸駅から新幹線と特急を乗り継ぎ、昼過ぎ大分着。
小雨がパラつく感じだけど、寒くもなく助かった。
彼女が予約してくれたホテルにチェックインして、まずは彼女の実家へ向かう。

お父さんもお母さんも最初は緊張していたみたいだけど、
段々と打ち解けてあれこれと話してくださった。
お母さんお手製のおこわやお味噌汁を出してくれて、とても美味しかった。

2時間程度お話したり家をぐるっと案内してもらう。
家の裏手が広めの畑、その上がちょっとした森になっていて驚いた。
生えている木は大木が多く、ナメコとシイタケの原木もあったり。

お父さんとお母さんに挨拶をして彼女の実家を出て、次に伯母さんの家へ。
ご挨拶して、30分ほどお話。とても喜んでくれた。

一旦ホテルに戻る。夜は彼女の親友と会食。
帰ってからホテルの屋上にある、景色が最高の露天風呂に入り、
湯上がりにハイボールを飲んで寝た。

駅前は最近再開発されたとのことで、
スカッと空が広く感じられる広がりのある空間が良い。

最近できたホテルなので、設備・清潔さと全てが二重丸。
調度は木がふんだんに使われ、意匠には地元の伝統工芸のモチーフが用いられている。
インテリアのデザインは水戸岡鋭治氏とのこと。

翌日は大分県立美術館、通称OPAMへ。
企画展は観ている時間がなかったのでパスしたが、
館内のあちこちをぐるっと回るだけでも楽しかった。

ファサードの切り文字を逆から。


広々とした1階の空間。

学生時代、お世話になった先輩デザイナーが
カフェまわりのグラフィックを担当している。
デザインもカフェのメニューも、お世辞抜きで大変素晴らしかった。

午後に彼女のお父さんお母さんと合流。
ドライブで別府温泉へ。
いわゆる「地獄巡り」を体験したんだけど、
こんなに温泉地にエンターテインメント性があって、
風通しが良く、開けた感じがしたのは初めての体験だったかも知れない。
おんせん県の看板は伊達じゃない。

お父さんとふたりで男湯に入りながらあれこれとお話させていただく。
娘の結婚に関してお父さんは多くは語らなかったけど、
最後に「(娘を)よろしく頼みます」と言われて、
ホッと安心したのか、逆に身が引き締まる思いなのか、
何とも言えないふわふわとした心持ちで風呂から上がった。

高速道で大分まで送ってもらって、お父さんお母さんと分かれた。
来た旅路を今度は逆戻り、日が変わる前に神戸の自宅に戻った。
パッと寝付けず、ずっと吸わずに取っておいたシガーを吸ってボーッとしていた。



手みやげとか格好とか何を話すかとかいろいろと考えて、
でもあまり良いアイデアが浮かばないまま当日を迎えて、
結局は出たとこ勝負になってしまったけど、
お父さんを前に初めて話をしたときも、緊張はしなかった。

言いたいことは全然言えず、伝えたいこともほとんど伝えられていないけど、
でも自分がどんな人間か見てもらえただけで良かった。
いろいろと気を遣ってもらって、ありがたかった。
結婚に向けて一歩前進。次は自分の実家に彼女を連れていかなければ。

これから、大分に何度も足を運ぶだろう。
広々としてのんびりとして、とても好きな土地。

湯けむり展望台からの眺め。
たくさん湯気が昇っているのが見える。

2016年2月12日金曜日

続けること、覚悟を持つこと

クルーズ船から、会社のある方を眺める。

仕事で、地元のFM局で10分コーナーのコーディネートを担当していて、
毎週月曜日の朝は生放送の立ち会いでスタジオに出向く。
今週の放送でちょうど100回目だった。
1回だけ、朝起きれずに別のスタッフに立ち会いをお願いした以外は
全て立ち会いしている。

2年弱、よく続いたなーと思いつつ、
世の中には生放送1,000回とか5,000回とか7,000回というオバケみたいな例も…
そもそも自分が携わっているのは10分コーナーなので、比べようもないけど。
さすがに100回続くと、立ち止まって悩んだりせず
スムーズかつオートマチックに、コーディネート業務ができるようになってきた。
続けることで、ようやく内容に幅と厚みが出てきた。
10分×100回の経験を与えてくれた人たちに感謝。



上記のFM局のディレクターと打合せの途中で雑談していた時に、
彼が「選曲してても、最近のバンドは音が良くないから大変」と言った。
彼は30年以上、ラジオの現場でディレクターをしている、
関西でも随一のキャリアを持つ大ベテラン。
仕事が丁寧で早く、いつも勉強させてもらっている。

発言の真意をただすと、
「業界のレベルが下がって、簡単にデビューできてしまうから、
技術が追いついていない」とのことだった。
更に「新しいミュージシャンたちは安易に業界に入ってくるため、
ちょっと儲からないとすぐに辞めてしまう。
例えばこの間もドラムが抜けた◯◯ってバンドとか…」とのこと。
そのバンド、俺でも知ってるぐらいだから少しは売れてると思っていたんだけど。

そのディレクター曰く、1度音楽業界を抜けた人間が
音楽業界で復活することはほとんどゼロに近いとのこと。
頑張っている人は応援したくなるけど、
辞めてしまう人には「はい、お疲れさまでした」と思ってそれっきりだという。

それってデザインの業界も同じだな、と思った。
「覚悟の問題ですかね」と水を向けると、「そう!覚悟」と強く同意していた。

ディレクターが最近、仕事でインタビューした
若手でかわいいルックスのミュージシャンのNさんとか、
誰でも知っている奇跡のアイドルHさんは、
腹が据わっていて、大人も驚くようなしっかりとした発言をするとのこと。
「彼女たちは、覚悟を決めているから発言にブレがなく、目標をちゃんと見据えている」とのことだった。


この1年、会社のインターンシップ受け入れ係に
行きがかり上任命されてしまい、昨年から10人弱の学生さんの相手をした。
彼ら彼女らが、入れ替わり立ち替わり弊社で働いてくれている。
一般大学の学生さんもいれば、芸術大学の学生さんもいる。
ぼんやりした人もいれば、即戦力クラスの優秀な人もいる。

この間、初出社のとある学生さんと昼ご飯を食べながら話していた。
彼女は一般大学の学生さんで、商品やサービスの企画へ就職を希望している。
以前、別のインターンシップで商品開発に携わった際、
パッケージデザインなども素人なりに考えたりしたらしい。
彼女に「デザイナーは、美術大学出身の人しかいないのか?」と聞かれた。
将来、就職して仕事をしていく上で、
デザインの知識や経験が必要だと感じたのかも知れない。

彼女の質問に対しては、
「必ずしもゼロではないが、美術大学や芸術大学、
デザインの専門学校を出ていない人は相当少ない。
でも地頭の良い人で、かつ勘が良く、手が動く人なら、
数年で普通にデザイナーとしてやっていける。」という旨の返答をした。
実際に、そういうレアなケースの知り合いもいたし。

でも本当はそれだけじゃないなーと、
その会話をして以来ぼんやりと考えていた。

自分は高校3年になってから美術の道を志したので、
現役時代の受験はショックなぐらい、さっぱりだった。
何がダメかも分かってなかった。
幸いにも東京の予備校で浪人をさせてもらうことができ、
そこで1年間みっちりと美術大学の受験勉強をしたことが礎となり、
その後大学に入学して4年間、
就職してデザイナーとして働いた15年間、
それから神戸でデザイナー兼何でも屋として3年間。

20年以上のキャリアを重ねてきて、造形に対する考え方から技術から、
その周辺のことをあれこれと学んで経験してきた。
それらは確かにデザイナーとして食っていくために必要だけれど、
それ以前の“資格”とか“通行手形”みたいなものってあるなあと。

いま考えると、予備校〜大学の間は、この道(自分ならグラフィックデザイン)で
やっていく、食べていくんだという「覚悟」を徐々に決めていくために
必要な時間だったと思う。
学ぶ内容の難易度の高さや、周りに優秀な人材が多いという環境で、
それでも自分はこっちの世界に進むんだ、という取捨選択をせざるを得ない時間。
もちろんその環境でふるい落とされたり、
「どうやら自分には向かないぞ」と気づいて、自ら違う道を選んだ連中も多い。

会社に入ってからは、更に周りのレベルが上がり、
全然無名の社内デザイナーにもクライアントにも
驚くほど優秀な人がいて(もちろんそうでない人も山のようにいて)、
ますますこの仕事を続ける気持ちが本物か偽物か、突きつけられることが増える。



自分が出会った大学生たちで、
何となく倍率1倍で大学に進学して、
就職活動の段階になって進路に迷っている姿を見ると、気の毒に思う。
ふるいにかけられる時期が少なかったが故に、自分の気持ちが定まらない。

それでも、まだ大学生なら間に合う。
良い年になっても、全くふらふらと腰が定まらない連中よりは救いがある。

この道で食っていくんだという覚悟がない人間に、
具体的なデザインの手法や、
ケースバイケースで変えなければならない考え方や、
細かい部分の納め方や、
フィニッシュワークの秘訣や、
後々の管理やマネジメントを考えた展開の心得や、
お客さんとのやり取りで気をつけることや、
プレゼンテーションのコツなんかを伝える気にはならない。

なぜならそんなことを相手も求めていないから、話しても伝わらない。
覚悟がない人は、「できないこと」すら甘んじて受け入れてしまい、
一向に成長することがない。
プロとして最低レベルのことができなくても、知らなくても恥を感じない。
お客さんにより高い価値を提供することに興味がない。
上のレベルを目指して、勝負するというプライドがない。
同じ失敗を繰り返し、同じところを延々とぐるぐる回り続ける。
らせん状に落ちることはあっても昇ることはない。

「何もできない」こと、何の専門性も一切持ち合わせていないことを
むしろ誇る人がいるけど、理解できない。
「何もできないからこそフラットな立場でいられる」みたいなことを言うけど、
それは詭弁だ。
フラットな立ち位置など最初からなく、自分の片寄りを自覚した上で
考えを述べ、実際の行動で示すことができない人間は、恐らく信用されない。
「フラットな立場」という片寄りが存在することを、自覚できていない。
その立場は、誰からも攻撃されない安全地帯では決してない。

そんな相手とは、一緒に仕事をしていてもひたすらつまらないし、
刺激も受けないし、突き上げられて焦ることもないし、
せいぜい自分の仕事の邪魔だけはしないでいてくれれば、と思う。

簡単にジョブチェンジできる流動性や
業界の風通しの良さが必要なのは理解できる。
それでも、例えば「文化」と呼べるぐらい完成度の高い仕事を
お客さんに求められる(または自分に課す)のであれば、
それ相応の基礎と経験に裏付けられた、
技術や知識の応用が実践できなくてはならない。

それは気づいたらその日から導入できることもあるし、
ちょっとかじったぐらいでは身につかないこともある。

覚悟を持って続けることで、ようやく見える景色があることは確か。
若い人や、周りのスタッフにそれを求めることはしないけど、
どうしたって良い仕事は良いし、どうしようもなくダメな仕事はダメで、
その差がある以上、最後はお客さんに比べられ、淘汰が起こる。

自分の技術や知識を用いることで
どれだけお客さんやユーザーを幸せにできて、
どれだけ困っている人を助けてあげることができて、
その結果、自分の仕事が幾らの対価(評価額)に変わるのか。

世の中で何かの役に立ちたいのであれば、真剣にそのことを考えないと、
「いなくても問題ない人」にされてしまう。

2016年2月10日水曜日

神戸お気に入りのお店:一燈園(いっとうえん)

昼からひとりで飲むのに最高のお店。

神戸に来て驚いたことのひとつに、串カツ屋が多いというのがある。
そんなにこっちの人は串カツが好きなのか?と越してきた当時は疑問に思っていた。

東京は焼き鳥屋はやたらとあったけど、
串カツ屋なんてほとんど無かった気がする。
現に、自分は人生で初めて串カツを食べたのは、神戸に越してきてから。
自分が東京を離れるのと入れ違いぐらいの時期に、
東京にも串カツ屋チェーンが増えたみたいだけど。

ソース2度浸け禁止とか、食べたことがなくても
知識としてそんなことは知っていたけど、
最初は串カツってものとの距離感を計れずにいた。



今の住まいの近くに水道筋商店街という商店街がある。
阿佐ヶ谷におけるパール商店街のような感じ。
水道筋は1本裏手に市場もあるので、その辺りは違うけど。

その商店街を進み、真ん中あたりでちょっと折れたところに、
一燈園(いっとうえん)」がある。
お年を召したオヤジさんとオネエさん、
その娘さんらしき女性と3人でやっているのかな。

いかにも昔からある店といった風情で、
思わずのれんをくぐってみたくなる店構え。
ひとりで昼から飲んでいても全然気負わなくて良い。

ここに来るのは決まって日曜日。
午前にバスケをして、商店街に買い物に行きがてら、
気が向いたときにここに立ち寄る。

他にお客さんが誰もいないこともあるし、
摩耶山あたりをハイキングしてきた山ガール(ただし妙齢)3人組とか、
近所のくたびれたカップルとか、その時々でいろいろ。

串はどれも安く、大体5〜6本を頼む。ジャガイモとかタコとかイワシとか。
串カツにはソースが既につけられた状態で、皿にはキャベツが敷かれている。
ビールはキリンの瓶を1本。

テレビではプロ野球中継をやっていたり、
ちょっと時間が遅くなると相撲中継をやっていたり。
それをぼんやりと見ながらビール、串カツ、ビールと繰り返す。
背中はシート一枚隔てて道路なので、その開放感も心地良い。
ビールを飲み干し、串カツを食べ終えたらそこで切り上げる。



串カツとの距離感は、ここ2年ぐらいで何となく掴めてきた。
ちょっと気になった時に気楽にお店に入り、
ガッツリ腰を据えずにサッと食べて店を出る感じ。
金額的にも、そんなお手軽感。

おやつやスナックまでは軽くないけど、食事までは重くない。
焼き鳥だったら、串カツより皆しっかり食べてしっかり飲む。その違い。

神戸の人は、そのどっちつかずで微妙な位置に
串カツをわざわざ据えているように見える。
玉子焼(明石焼)も、存在として似ている気がする。

絶対的に美味しいというものではないけど、
時々、ソース味をふと思い出して食べたくなる。

この渋さ。外の気配を感じながら飲むのが実に良い気分。

夜の外観。ここはよほど酒修行した人じゃないと、
女性ひとりでは入れないだろう。

2016年2月5日金曜日

神戸に移住してみて考えた

三宮から西側を臨む。
この写真を撮った時は、仕事で絶望的にぐったりしていたタイミングなので
心なしかモヤっとうすら悲しく見える。

福岡が官民一体となって経済的な発展を実現し、
大規模イベント開催の戦略的な支援策もあって観光客は国内外から増え、
理想の移住先として注目される機会が本当に多い。

でもね、というのではないけど、この記事に書かれていることって
そのまんま神戸にも当てはまると思った。
家賃・通勤時間・休日の過ごし方…同意できるところばかり。

そして記事の最後に出てくる
「それだけ街を好きな人が多いし、そのことが仕事のある部分エネルギーやモチベーションになっていますね」
という部分は、本当に実感としてある。

地元を愛する人が多く、自分も仕事を通じて地元に何を還元できるのか、
地に足の付いたレベルでそのことを考える機会が多い。
東京にいた時は、全く考えたことがなかった。

本当は考えることもできたのだろう。
当時は地域に対してというよりは、
自分の所属するコミュニティに対することばかり考えて、実行していた。

そのレベルでないと考えられないぐらい、
東京は街のスケールが巨大だった。



移住するとなると、必然的に今あるものとこれから手に入れるもの、
それによって失うものを比べて取捨選択することになる。

漫然と、その時持っているものに囲まれた暮らしが当たり前だと思っていたけど、
思い切って失ってみたら、むしろ解放されて自由になると感じることもある。
大切に思っていた事柄が、逆に枷となっていたこともあるかも知れない。

友人や仲間や遊び場や仕事や実績や環境や財産や体面や刺激や…
自分が今後、何を大事にして生きていきたいのか、考えるきっかけになった。
それから、あれこれ手放してからの新しいチャレンジは、
東京で長く暮らすうちに、いつのまにか死にかけていた自分の内側を元気にした。


福岡って本当に素晴らしい街なんだろう。神戸も負けずに良いとこだよ。
海と山があって、そこの間に街が挟まれていて、
海から街を突っ切って山まで歩いても30分程度。
朝の通勤時間帯でもとなりの人に接触することのない電車内。
ありとあらゆる外国人が住んでいて、街に点在する様々な宗教施設。
やたらと神社やお寺があって、街角には小さなお社が祀られている。
外から来た人間に寛容な土地柄。

東京は、たまに友達と遊んだり、バスケの大会に参加するために行く。
東京まで安く楽チンに移動するとなると、
怖いと話題になった深夜高速バスになるけど。

寝ていれば翌朝東京に到着しているし、
帰りも寝ていれば翌朝三宮に戻ってきているし。
安全性がどうかなーと思いつつも、便利なので結局使っている。
片道8,000円前後。

東京は心理的には案外近いことが分かったので、
今はそんな距離感のお付き合いでいいかな。

自分が撮った神戸の写真で、好きな1枚。
夕焼けの湾岸、倉庫街の向こうには六甲山。

2016年2月3日水曜日

神戸お気に入りのお店:SAVOY hommage(サヴォイ オマージュ)

花隈公園脇の坂道を登ったところに、そっと現れるエントランス。
この日は夕方に撮影したのでまだ明るい。

神戸に来て、最初に訪れたバー。
東京で知り合った女性の飲み友達が、自分とほぼ同時期に神戸に移ってきた。
その人が紹介してくれたのが「SAVOY hommage(サヴォイ オマージュ)」。
彼女は神戸が故郷で、以前に地元で働いていたときに通っていたとのこと。
神戸の名店「サヴォイ」の系譜。

初めてお店に入った時に、その雰囲気にうわー…っと引き込まれ、
同時にホッとする温かな空気を感じた。
それ以来、神戸で一番“神戸らしいバー”はどこ?と聞かれた時には、
迷わずここを紹介するようにしている。

自分が生きてきた時代より、はるか昔にタイムスリップしたかのような、
イメージの中にしか存在しないような懐かしい内装。
沈没した豪華客船、タイタニック号の内装をイメージしたらしい(ホントかな?)。

ほの暗い店内とウッディでダークカラーな調度、
気の利いた小物のチョイスはオーナー・バーテンダー森崎さんのセンス。
港湾エリアに近い旧居留地などに代表される、
神戸のレトロモダンな佇まいを今に写している。

バックバーのお酒もなかなか憎い揃えになっている。
時々、モルトなどのウイスキーやウォッカなんかの珍しいオールドボトルを、
さりげなく仕入れていたりする。
そんなボトルを勧められたら、飲まない訳にはいかない。

そしてカウンターの右の棚に並ぶのは、超・オールドボトルたち。
人生で1度ぐらい、何か間違って大儲けしてしまった時に開けてみたい。
きっとそんな日はこないだろうけど。

森崎さんは神戸を代表する腕利きのバーテンダーで
(追記:2016年2月のコンペで、念願の関西ナンバーワンになった)
オリジナルカクテルは特に香りにこだわっているみたい。
オリジナルのリキュールなどを使った、複雑で凝ったカクテルも多く、
いざ目の前で作ってもらうと驚く。そして飲んで納得。

普段は冗談ばかりで軽いノリの人だけど、
仕事となると途端にキッチリ仕上げるあたりがさすが。

ひとりでぼんやり飲むのも良いし、誰かとじっくり話し込むのも良いし、
もちろん彼女とデートで一杯というのも良い。
どんなシーンにもしっくり馴染む、神戸のオーセンティック・バー。

冗談と本気の大きい振り幅の間を行ったり来たりしながら、
マスターが作る素晴らしいカクテル。

気取っているだけじゃなく、
ポカンと気の抜けた部分が居心地の良さを作っている。

2016年2月2日火曜日

神戸お気に入りのお店:来々亭(らいらいてい)

鉄壁のコンビネーション。
働き者のご夫婦がせっせと料理を作って、にぎやかに接客している。

神戸に来てからは、休日の午後や夜にバスケをするより、
圧倒的に日曜日の午前中にすることが多くなった。

バスケをしたら当然喉が渇く。ビールが飲みたい。腹も減った。
そこでフラリと適当なお店に入って一杯やりたくなるのだが
(さすがに昼から酒につき合ってくれる奇特な人はいない)、
昼間ともなるとそんな便利なお店があるようで無い。

必然的にラーメン屋で一杯、ということになるのだが、
自分の場合はバスケ後にJR元町駅で電車を降りて、
その足で休日出勤をすることも多いので、
腹ごしらえに元町近辺でお店を探すことになる。



JR元町駅から西に徒歩5分ぐらい、
モトコー3丁目高架下の「来々亭(らいらいてい)」。
何度かお店の目の前を通り過ぎているうちに気になって、
あるときに入ってからファンになった。

働き者のご夫婦が狭いお店で休むことなく動き回っていて、
次々と入ってくるお客さんをさばいている。
おっちゃんは常に大声で冗談を言っては、
常連さんと競馬の予想など、他愛のない会話をしている。

お店に入るや否や、まず「兄ちゃん、ビール飲む?」と聞いてくるので、
飲む気マンマンなこちらとしては「ちょうだい」。
で、キリンの瓶ビールが、小さな漬け物の小鉢とともにサッと出てくる。
素晴らしい。

逆に飲む気がない、初めてのお客さんは面食らうと思う。
自分は大抵、ビールを飲みながらギョーザを1枚、それからチャーシュー麺。
麺をあとから頼むとき「チャーハン一緒にいらんか?」と
これまたおっちゃんに聞かれるけど、
麺に充分ボリュームがあるので、こちらのオファーは断っている。

おばちゃんはずっとカウンターに背を向けて、
麺を茹でたりチャーハンを炒めたりと忙しい。

こちらに行くときは日曜日の13時前後なので、
店のテレビではNHKの「素人のど自慢」が放送されていて、
のんびりした“地元のラーメン屋”といった風情が
中年のひとり食べ飲みにはぴったり。

ギョーザは、おっちゃんがお店で包んでいる。
やや小ぶりで、タレは神戸ならではのミソダレ。
これににんにく醤油のようなタレをちょっと混ぜる。

ラーメンは、麺は白っぽい色で縮れがないストレート麺。
スープはサラッと澄んだ、あっさり甘めの味わい。
東京あたりのこってり系とは大きく異なるが、
神戸にはこのタイプが多いみたい。
神戸に来てからこの手のラーメンを食べて、好きになった。
ギョーザのタレに混ぜるにんにく醤油ダレを追加で足して、味を変える。

変な意味ではなく、
美味しすぎない“ほどほどの美味しさ”ってあると思う。
こちらのお店は雰囲気を含めて、全ての加減がちょうど良い。

支払いの際には「兄ちゃん、1500万円な」とおっちゃんが言う。
これぞ、関西の外から来た人間が期待する関西のあり方。乱暴だけど。
「ホナおつり、500万円」。きっちりおつりにも適用される。
帰る際には「兄ちゃん、ホナまた明日な」。
明るい気持ちになるお店。

何はともあれビール。ガラリと扉を開けたらすぐ聞かれるし。

教科書通り、ビールにはギョーザ。シンプルな味。

チャーシュー麺。チャーシューの盛りが良い。
しみじみと美味しく飽きのこない味。