摩耶山掬星台からの眺め。神戸の街を一望できる。
神戸に移住した理由は「山」だった。
六甲山・摩耶山という神戸市の“裏山”というべき山エリア。
この地域を活性化して観光客増加を目的とした行政のプロジェクトに、
専任でへばり付く人間が欲しいということで今の会社からお声が掛かった。
事前の説明を聞いてもイマイチ概要が分からないまま、
最後は直感とタイミングでエイヤと決めてやって来た。
事前の説明を聞いても分からなかったのは、
呼んだ側もプロジェクトのアウトラインが分かっていなかったから。
実際こちらに来てプロジェクトに携わると、
最初に聞いていた話とかなり隔たりがあることに驚いた。
ただ、その段階で引き返すわけにもいかず、結局神戸に居着いてしまった。
初めての転職というだけでなく、
20年過ごした東京から縁もゆかりもない神戸にIターンで移住するのは
ちょっとだけ思い切りが要ったけど、いざ住んでしまえば快適な土地で、
神戸ならではの暮らしを楽しんでいる。
…
山に関わる仕事(林業などではないけど)をしていて2年半ともなると、
地域の方や、山エリアの有名人とも知り合い、
公私で仲良くさせていただくことも増えてきた。
友人などほとんど居ない土地なので、このことは凄くありがたい。
その中で、勉強会の講師をしていただいたり、仕事の情報提供をお願いしたり、
自分で漬けた漬け物をお裾分けしてくれたりと、
いつもお世話になっているMさんというオジさまがいる。
昨年12月で3回目となった、地元のトレイルランニングレースの発案者で、
実行委員会の委員長を務めるとてもユニークな方。
日本中誰でも知っている神戸の超名門校出身のエリートでありながら、
ちょっとどうなの?というぐらい気さくでフットワーク軽く
神戸中をスイスイと飛び回っている。
ちょうど年齢的に父母と同じぐらいということもあり、妙な親近感もある。
ところで神戸は全国的にも珍しく、新幹線の駅=新神戸駅を出ると、
すぐ裏が山道(ハイキング道)につながっている。
新神戸駅から15分程度歩くと、「布引の滝」があるのだが、
自分は神戸に来てからまだ1度もこのルートを歩いたことがなく、
また布引の滝もハイキング道からは見たことがなかった
(布引ハーブ園のロープウェーから見下ろしたことはある)。
そのことをMさんに伝えたところ、
「神戸の山の仕事をしている分際で布引の滝を知らぬとは何事ぞ!」と
鼻息も荒く案内役を買って出てくださった。
これは面白そうだと、仕事でお世話になっている地元FM局の
若手ラジオマンAさんを誘って、
男3人で「六甲山系歴史ハイキング」開催と相成った。
「歴史」がオマケで付いてきたのは、
より地域のことを知るために歴史を教えていただきつつ山歩きをしたい、
という不勉強で強欲なこちらの意向を汲んでいただいた結果。
博覧強記のMさんは殊更六甲山の歴史に詳しく、
お話をうかがうだけでとにかく面白く勉強になる。
…
この日は朝に自宅を出てから、ひとり徒歩で山に分け入る。
暖冬の影響か、とても暖かく、山に入ってすぐ中に着ていたフリースを脱いだ。
家を出てから1時間15分ぐらいで、山上の掬星台に到着。
景色を見たり、いろいろ型破りなアウトドアグッズのレンタルと販売ショップ
「
monte702」で、新しいオリジナルアイテムを見せてもらったり。
お昼ご飯はmonte702のおとなり「
カフェ702」で、オムハヤシ。
大変美味しく、エネルギー充填完了。
そこで3人集合して、いよいよハイキングスタート。
山上で昔あったという遊園地のローラーコースター跡を案内してもらってから、
オテル・ド・摩耶と摩耶山天上寺へ。
「
摩耶山開運八ヶ所巡り」のスタンプを押したり、
天上寺では偶然いらっしゃった副貫主にご挨拶してからお詣りとお守りを購入。
一旦掬星台近くまで戻ってから、山道に分け入って、
そこからはMさんの愉快なお話を聞きながらの山行となった。
じっくりあちこち見たり、歴史的な謂われをうかがいながら
最大のお楽しみ「
おんたき茶屋」にたどり着いたのは16:30ぐらい。
ここで、Mさんの教え通りビールとおでんでカンパイ。
これぞ正しい神戸の休日。
この茶屋は別の機会に書きたいぐらい、とても素晴らしいお店だった
(実は明日また仕事で訪れる)。
滝を眺めながらのビールとおでんは、最高に美味しかった。
「布引の滝」を構成する雄滝・雌滝・夫婦滝・鼓滝の4つの滝と、
普段は見られない「五本松かくれ滝」をそれぞれ見て、
新神戸駅まで下る。ここで解散して、3人別々に帰途についた。
…
山が市街地のすぐ裏にある神戸は、
土砂災害や猪の獣害など、リスクを背負っているけれど、
これだけ豊かな自然にすぐにアクセスできるなんて本当に素晴らしい。
神戸では昔ほど皆が山で遊ばなくなったという声をあちこちで聞くけど、
それでも子どもや友人と一緒に、上手に山に親しんでいる人たちが
自分の周りにはとても多いと感じる。
そんな山の「先生」と一緒に山に入ってみると、
自分の知らないことをこれでもかと教えてくれる。
初心者だけでふらっと山に行くだけでは分からない、
山の楽しみ方がググッと広がる。
自分はそもそも、アウトドアレジャーや山歩きなどは
嫌いじゃないにせよ、これといって興味があるわけでもなかった。
それでも導いてくれる人が居ると、いつの間にか染まってしまうもんだ。
そういう意味で、自分はとても恵まれている。
神戸の山の先生、思いつくだけで何人も顔が浮かんだ。
そしてMさん、この日はありがとうございました。
次回はもっとマニアックなツアーをお願いします。
[この日歩いたルート]
自宅→
青谷道→
掬星台(集合・昼ご飯)→
オテル・ド・摩耶→
天上寺→
桜谷道→
徳川道→
トエンティクロス→
市ヶ原→
五本松堰堤→
おんたき茶屋→
新神戸駅(解散)→
自宅
1日でちょうど20kmぐらい。
とある事情で地下足袋を履いての山行だったので、
アキレス腱のあたりがかなり筋肉痛になった。
お昼ご飯はカフェ702のオムハヤシ。
コタツがあったりしてとても面白い山上のカフェ。
お値段も市街地と変わらない。